年間の凍死者数は1000人を超え、熱中症での死亡者数の2倍強

地球規模で、現在進行形の問題として取り上げられる話題といえば、環境破壊やテロ、人権侵害やエイズなどの感染症があげられる。

 

その中でも、最も重要視されている問題は温暖化だろう。

 

IPCC気候変動に関する政府間パネル)の報告書によると、過去132年間の地球の平均気温は約0.85℃上昇したという。

 

日本の大都市に目を移すとさらに高く、環境省によると東京や名古屋、大阪ではこの100年で平均気温が約3℃上昇していると報告されている。

 

とはいえ、冬になればやはり寒いものは寒く、雪だって降る。

 

暖房器具がなければどうしようもなく寒い日が何日も続いたりする。

 

寒い中にずっと身を置いていると、私たちの生命を脅かすのが低体温症という症状である。

 

低体温症の向かう先には「凍死」という生命の終わりが待っているからだ。

凍死は熱中症死亡者数の倍の1000人超え 

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ウェザーニュースによると、2019年大晦日から元旦にかけて冬型の気圧配置が強まり、全国的に寒くなるという。

 

晦日の東京は日中約16℃と暖かいが、日付をまたぐ頃には4℃、午前3時には3℃まで気温が下がるようで、極寒対策をしなければ低体温症になる危険性が高くなる。

 

寒いまま放置しておけば凍死してしまう可能性もある。

 

しかし夏になると熱中症のニュースは多く耳にするが、凍死のニュースはそれほど多くない印象がある。

 

凍死とはいっても寒い雪山で遭難したケースや、極寒の山間部で暮らしているケースなど特定の場所、条件でしか起こりえない稀な死因だろうと思ったら大間違いだ。

 

実際に、2017年の統計調査によると熱中症死亡者数635人である一方、凍死者数は倍以上の1371人にのぼる。

 

さらに驚くべきことに、2014年~2016年の凍死者数の平均値をみてみると、東京が80.0人と全国で最も多いのだ。

 

人口100万にあたりの数でみると少ないが(100万人あたり5.872人)、それでも毎年80人ほど低体温症で凍死しているという事実は無視できない。

屋内での凍死が最も多い

それでは具体的にどんな場所で凍死することが多いのだろうか?

 

極寒の深夜の公園や道端で泥酔したり、持病の発作が起こって誰にも気づかれぬまま放置され低体温症で凍死するケースが考えられる。

 

だが実際には、屋内で凍死するケースが最も多い。

 

2017年の凍死者数1371人に対し、屋内で死亡したケースは約40%の531人と断トツに多い。

 

街路での死亡数65人と比べると、いかに屋内での凍死のリスクが高いかがわかるだろう。

70代80代の高齢の男性が多い

凍死者数を男女別にみてみると、約6:4で男性の方がやや多い傾向にある。

 

しかも高齢になるほど死亡者数が増えていることがわかる。

 

グラフで見てもらえばわかる通り、70代80代が圧倒的に多い。

 

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これは老人性低体温症とは無縁ではないだろう。

 

人間というのは本来、体温を一定に保とうと寒いときには体内の熱を逃がさないようにする機能がある。

 

しかし、高齢になって体の機能が衰えてくると体内の熱が逃げてしまい、徐々に体温が奪われてきてしまうのだ。

 

そのため、たとえ屋内であっても暖房をつけず薄着のまま就寝したりすると、低体温症となり、やがて凍死してしまうのだ。

 

屋内での凍死者数は、男性280人、女性252人と大きな差はないが、トータルの凍死者数では男性804人、女性567人と差が生まれているのは、きっと行動範囲や生活環境の違いによるものと思われる。

 

男性の場合、商業施設や工業用地、農地での凍死者数が女性より比較的多いのがその証左でもある。

凍死を防ぐために知っておきたい低体温症の症状

それでは凍死の直接原因である低体温症になると、どんな症状があらわれるのだろうか?

 

自分が凍死の危険にさらされた時はもちろん、周りの人に低体温症とみられる症状があらわれればすぐに察知することができる。

 

早めに対処することで命の危険から回避することができるので、是非知っておきたい。

体温36℃~34℃

  • 体が震える(シバリング
  • 皮膚の感覚が麻痺する
  • うまく歩行できずよろよろと歩く
  • うわごとを言う

体温34℃~30℃

  • 体の震え(シバリング)が減少、または消失する
  • 呼吸が荒くなる
  • 意識障害を起こす
  • 錯乱状態になる

体温30℃以下

  • 意識が低下し、瞳孔が開いてくる

低体温症になった場合の対処法

上記のような低体温症の症状がみられた場合、次のことを心掛けておこう。

 

①風や寒い環境から避難させ、暖かい屋内に移動する

②衣服が濡れていたら脱がせて、毛布などで体を温める

③ヒーターや湯たんぽなどで急激に温めず、徐々に体を温める

 

体が凍るように冷たくなったら、高温の温熱ヒーターなどで温めてしまいがちだが、NGだ。

 

これは冷えた血液が急激に心臓に流入することにより、死亡する危険性が高まるため。

 

症状が重いほど、少しずつ体を温めることを心がけよう。

お酒に飲まれるタイプは要注意

忘年会シーズンが終わり、1月になると新年会に参加する人もいるだろう。

 

酒量を自分でしっかりコントロールできる人はいいが、時にお酒に飲まれてしまうタイプの人は注意が必要だ。

 

酩酊状態になって、公園のベンチに眠り込む、人通りの少ない街路などで座り込んで薄着のまま眠ってしまうということもあるかもしれない。

 

そうなると必然的に、凍死のリスクはグンと高くなる。

 

高齢者に多いからと、侮っていたら思わぬ命に危険にさらされてしまうことになるだろう。

 

若くて体力に自信があっても、寒い夜間に屋外で寝れいれば常に険と隣り合わせでいるということを忘れてはならない。

 

【参照】

夏の熱中症より多い、屋内でも起こる冬の「凍死」にご用心 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

怖い低体温症|メンテナンス体操